奄美の自然・文化・歴史等の広報・教育に関する陳情書

二〇〇九(平成二十一)年十月三日

鹿児島県議会議長 金子万寿夫様

陳情者 鹿児島市坂元町38―3

「島津藩による奄美・琉球侵略四百年・奄美の未来を考える集会」

実行委員会 (代表) 仙田 隆宜

 

1 陳情趣旨

 

 奄美は、今年は「皆既日食」のことがあり、その奄美の地理的存在のため国内外から多くの注目を浴び、いろいろな情報を発信することができました。奄美にとっては大変うれしいことでありました。

 

 しかし、奄美にとって、二〇〇九年という年はもっと重要な意味を持った年であります。それは、島津藩が奄美・琉球を武力で侵略・侵攻してから四百年目の年であるということです。

 この年から、奄美は琉球王朝の支配下から島津藩の直轄領として苦難の歴史を歩み続けることになりました。島を離れて、鹿児島本土で暮らした人々は、かつてかなり屈折した感情を内包しながら生活を営まなければならなかったといわれています。

 こうした歴史については、四百年目の現在に至っても一部の人々を除いては認識されておらず、歴史の闇の中にひっそりと、さもなかったかのように埋もれております。

 また、奄美の歴史的な分野だけでなく、奄美の固有の自然や文化についても、その重要性について認識されていないことを痛感しています。

 

その一つの典型として、方言があります。二〇〇九年二月二十九日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、世界で約二千五百の言語が消滅の危機にあると発表しました。そこには驚くべきことに、「奄美語」が上げられていたのです。国連の機関が奄美方言を独立した言語と認め、さらに危機にあると警鐘を鳴らしたのです。ユネスコの担当者は「日本で方言として扱われているのは認識しているが、国際的な基準だと独立の言語と扱うのが妥当と考えた」と発表しています。

 

 私たち、奄美に関心を寄せるものたちは、二〇〇九年の今年、奄美の島々の辿った歴史を見つめ直し、奄美の伝統文化や特異な自然について、その豊かさを改めて認識するため、この「島津藩による奄美・琉球侵略四百年・奄美の未来を考える集会」に集いました。そして、これらの課題を現代に生きる我々はもちろん、後世に引き継いでいく必要性を痛感し、参加者の一人一人がその使命を負うことを誓うと共に、鹿児島県においても同様な認識で、県民への広報や学校教育で取り入れていただくことを切に願い、陳情いたします。

 

2 陳情項目

 

(1)   奄美の島々は、琉球王朝の支配下から一六〇九年以降は薩摩藩の直轄領となり、さ

らに第二次世界大戦後は米軍政下の異民族の支配下におかれ、一九五三(昭和二十八)年に激しい復帰運動を経て、今日に至るという類稀な複雑な歴史を有しており、この歴史ゆえに奄美の民衆は筆舌に尽くしがたい苦しみを負って来ております。こうした奄美の歴史を鹿児島県民及び各学校教育において正しく認識できるようにわかりやすく伝えていただきたい。

 

(2)   奄美の方言(シマグチ)や民謡(シマウタ)など奄美の風土に根ざした伝統文化の重要性は識者には高く評価されているものであります。これらの方言や民謡を将来にわたって継承していけるような手立てと鹿児島県民及び各学校教育においてもその重要性をわかりやすく伝えていただきたい。

 

(3)   奄美の自然や多様な生態系は極めて特異なものであり、希少価値を持つものでありますまた、奄美の先人たちの自然との関わり方も、現代に生きる私たちに多くの示唆を与えてくれます。こうした奄美の貴重な自然、多様な生態系を守り、育てると共に、広く県民や各学校教育において正しく伝えていただきたい。